「千茉莉…大丈夫か?」
響先生の優しい声が聞こえた。
開け放たれたままのドアに寄りかかって動けないでいるあたしを見て驚いたと思うのに、何も聞かずにあたしをフワリと抱きしめてくれる。
顔を上げようとした瞬間に抱すくめられてしまったから、先生がどんな表情(かお)をしているか判らない。
だけど、きっとすごく驚いて心配しているんだと思う。
迷惑かけちゃったな。
真由美さんにした事をどう説明したら良いんだろう。
どう切り出そうか言葉を探していた時だった。
「ありがとう…千茉莉。おまえはいつも俺を救ってくれる。」
「響…センセ?」
「ごめん…聞いてた。どこで出て行くべきか様子を見ていたんだ。俺の為にあんなに真剣になってくれてありがとうな。」
先生の声が耳元で優しく心地良く響いた。
表情をは分からないけれど、抱きしめる腕が僅かに震えているような気がした。
それがあたしの震えだったのか…
それとも響先生のものだったのか…
それすら判らないほどに互いを近く感じる。
抱きしめる腕が温かくて、震えていた身体も徐々に落ちつきを取り戻していった。
心が満たされていく。
響先生が好き…
胸の奥底から熱い想いが込み上げてきて…
触れている場所から伝わってしまいそうだった。



