やっぱりダメだ。
千茉莉に何度電話してもマナーモードになっていて繋がらない。
最初にドキドキしながら電話をかけてからすでに3時間余り。
清水の舞台から飛び降りるというのは、ああいう気持ちだろうか。
震える指でようやく千茉莉の携帯に電話をかけたのに、1回目は話し中だった。
診療の合間をぬってその後も何度かかけてみたが、ずっとマナーモードになったままだ。
なかなか繋がらない事にイライラし始めた俺は、ちょうど診療も一区切りついた為気持ちを落ちつけるために散歩に出た。
あの日と同じ色の夕日が町を蜂蜜色に染めている。
懐かしい思い出を引き出すように世界を朱に染め、光が見るものを黄金に変える。
その光の中に見つけた小さな天使の面影が、徐々に真っ白な羽を広げた千茉莉のイメージへと変わっていった。
あの日俺のもとに遣わされたエンジェル。
千茉莉はあれからどうしているんだろう。
あの夜彼女を玄関まで送った時に、また会う約束をしなかった事を後悔した。
千茉莉にとって俺はどんな存在なんだろうか。
亜希は俺達が想い合っていると言っていた。
…千茉莉も俺と同じ気持ちでいてくれるんだろうか。
千茉莉と始めて会った日の思い出を振り返りながら歩き続けていたせいだろうか…
足は自然にあの公園へと向いていた。



