「ねえ、千茉莉。どうしたの?なんだか一人で百面相してるけど?」

あたしと一緒に来ていた、家庭科部の友達、川本空(かわもと そら)があたしに声をかけた。

げっ!!そんなに大きな声で名前を呼ばないで欲しい。あいつに聞こえちゃうじゃないの。
そう思って、恐る恐るあいつのほうに視線を移すと…


最悪……


あいつはしっかりあたしを見ていた。少し驚いたような顔をして、それから何かを企む様な顔で(あたしにはそう見えたのよ)にやっと笑った。

一瞬背筋が寒くなってあわてて視線をそらす。

ひえ~~~見つかったよ。また何か言ってくるんじゃないでしょうね?
無視よ無視!!あいつにかかわったらロクな事…


「あれ?千茉莉じゃないか?何してんだこんなところで?」

…声かけないでよ。

「え?あの人千茉莉のお知り合いなの?すごく素敵な人じゃない。私さっきから気になっていたのよ。モデルみたいに綺麗な人だなあって。」


空…そういえばあんたって、無類の美形好きだったわね。

「こんにちわ。千茉莉のお友達?かわいいコだね。」

愛想のいい顔でにっこりと微笑んであたしには死んでも言わないような台詞を吐く。

鳥肌がたちそうだよ…。

空はあいつの嘘の顔にノックアウトされてしまったらしい。真っ赤になってモジモジしている。


目がハートになってるよ、空。