生徒会室を出る頃には、校内はもう静まり返っていた。

夏の名残を残した太陽が、大きく滲むように西の空へとゆっくり傾き始めている。

二人の顔がほんの少し赤いのは、夕日のせいだったのかもしれない。

先輩が差し出した手に指を絡めるようにして手を繋ぐ。

繋いだ手の平から、想いが伝わってきて心まで繋いだような気がした。

温かくて…優しくて…切なくて…恋しくて…愛しくて…

どれも一つの言葉だけでは表現できないような、複雑な幸福な気持ち

あたし達は、手を繋いで寄り添うように校舎を抜け、中庭へと差し掛かった。

暁先輩はもういなかったけれど、その場所にまだ切ない思いが残っているような気がして、自然に目が行ってしまう。


そんなあたしをそっと抱きしめると、龍也先輩は釘を刺すようにそっと耳打ちした。


「次は無いからな?どうせ見とれるなら今度は俺にしておけよ。」


甘い甘い声で囁くそのセリフの前に、誰が言い返すことなんて出来るんだろう。


コクンと頷いて小さく呟く。


―― 安心して。もう、先輩しか見えないから ――




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