【長編】Love Step~冷血生徒会長×天然娘の恋愛初心者ステップアップストーリー~

それでもあたしの手を引いて気持ち良さそうに春風に吹かれて歩いている龍也先輩を見ていると何も言えなくなってしまう。

少し遠回りしようと龍也先輩はマンションから程近い川の土手にある桜並木へとあたしを連れてきてくれた。

この桜並木はあと1か月もすれば桜が満開になる。

僅かに早咲きの桜が咲き始めているのを見つけてはしゃぐあたしを先輩は優しい瞳で見守っていてくれた。

こんな時間を持てるのならサボるのもたまにはいいかもしれないと思い始めている自分がいたりして…。

「たまにはこう言うのも良いだろう?まだ腹が減っているようなら川縁の桜の木の下ででも弁当の続き食うか?」

あたしの心を読んだようなタイミングでそう言う龍也先輩にちょっと驚きつつもコクンと頷いた。

「…そうですね。お天気もいいしこのまま帰るのももったいないですし…。」

先輩に手を引かれて一本のさくらの木の下に座り込む。
早咲きの桜が枝の先に一つだけピンクの淡い花を咲かせているのがとても印象に残った。

「桜の季節にはまだ早いけど…いつかこの場所に聖良を連れてきたいと思っていたんだ。」

「…あたしを?」