意識が遠のきかけた時腕を強く引かれるのを感じた。

それから広い腕に抱きとめられて一気に水面まで引き上がられた。


冷たい外気が肌に触れ、刺さる位の痛みを感じた時一気に肺に空気が流れ込んできた。

ようやく助かったのだと気付くまでどの位時間がかかったんだろう。

龍也先輩があたしを強く抱きしめて無事を確かめてくる。

笑って大丈夫と答えたいのに寒さと恐怖に震える唇からは擦れた声しか出てこなかった。

その後の事は良く覚えていない。

多分暫くの間気を失っていたのではないかと思う。

ふと気が付くと龍也先輩があたしを抱きあげて何処かへ運んでいる所だった。


ああ、本当に抱いて運んでもらう事になっちゃった。


先輩の腕はあたしを心ごと包んでくれるくらい温かくてこんな時なのに何故か幸せだと感じてしまう自分がいた。