龍也先輩は立派だ。

お父さんが亡くなってから一人で生きてきた。

ちゃんとバイトして生活費を稼いで一人で自立して生きている。

あたしは…?

あたしは大切に守られて育ったと思う。

ママやお兄ちゃんに布で包まれるように温かい場所を与えてもらって育ってきた。

だから、先輩みたいに強くは無いし、自立もしていないかもしれない。

この1週間あたしの中に色々な葛藤があった。

先輩があまりにも大人に見えて、自分がこのままでいいのかなって凄く不安になった。

あたしもバイトをしたいとか、自立しなきゃとか思ったりもしたけれどお兄ちゃんにそれは違うと諭(さと)された。

お兄ちゃんの言った言葉がずっとあたしの心の中にリフレインしている。

『龍也はおまえに心の救いを求めているんだ。
あいつを愛しているならただ傍にいて抱きしめてやればいいんだよ。
あいつはおまえに何かをして欲しいわけじゃない。おまえという存在が必要なだけなんだ。』

目が覚める思いだった。

先輩の隣りを歩くのに相応しい女性としてどうしたらいいかなんて最初から視点が違っていたってことにようやく気付いた。

あたしには最初からできる事がたった一つしかないって言う事。


先輩の心を癒す存在になること。


あなたを支えたい。
癒してあげたい。
あなたを傷つける全てから護ってあげたいの。

ずっとずっとあなたの傍であなたと共に生きていきたい。

重い言葉だと思っていたけれど今は素直に認めることが出来る。


あなたを心から愛しています…龍也先輩