事の起こりは1学期の最終日

終業式を終えてクラスに戻ろうとしている時のことだった。

クラスメイトと一緒に階段を上がっていた時
よろけた友達を支えようとして
あたしはバランスを崩してしまった。

後は言わなくてもわかるかも…

そう、ご想像通り
あたしは階段の下にいた佐々木先輩を見事にクッションにしてしまったの。

おかげで無傷だったんだけど
先輩は腕に怪我をしてしまった。

明日から高校生活最初の夏休みと浮かれていたあたしに、夏休み没収の烙印が押されたのはそのときだった。


佐々木先輩は有名な人だ。

2年生ながら生徒会の副会長をしていて
会長よりも頭が切れると噂が高い。

後期の生徒会長は佐々木先輩だと、学校中の生徒が暗黙の了解のように思っている。

確かにもてそうだよね?

身長は180cmはあるだろうか?

細身の体だけれど、あちこちの運動部から助っ人依頼が来るくらい運動神経もいいらしい。

染めているのか光の具合によっては紫に見える髪。

銀のフレームのメガネが知的な雰囲気を醸し出している。

その奥にある瞳は吸い込まれそうなくらいの黒。

すごく整った顔立ちは、アイドルグループも顔負けで…。

クールビューティといわれるだけあって、完璧すぎて怖いくらい。

スポーツが出来て頭もいい。

おまけにいい男と来たらもてないほうが不思議だ。

でもね。あたし知らなかった。


佐々木先輩があんな意地悪だったなんて。