【長編】Love Step~冷血生徒会長×天然娘の恋愛初心者ステップアップストーリー~

なんだか、笑いがこみ上げてきて、優しい気持ちになれる俺がいた。

聖良の兄さんに認めてもらわなきゃとかそう言う肩肘張った考えがすうっと引いていくのがわかる。
聖良を同じように大切に思っている兄さんが誰よりも身近な人に感じられる。

何よりも誰よりも聖良が大切で、だからこそ五月蝿くなってしまう気持ちも良くわかる。
そう思ったら、一つの提案を自然に口に出していた。
それが一つ間違えれば自分の首をしめる事になる事もわかっていたのに…それでも兄さんの気持ちが俺の中の何かとリンクして気付いたら口が勝手に動いていた。

俺達の望みはただ一つ


聖良が幸せに笑ってくれている事だから。


「どうしても無理にとは言わないですよ。本当に偶然手に入っただけで、本来なら行く事の無かった場所です。ただ、聖良が以前行きたがっていたのを知ってますし昨夜話して楽しみにしていたので…良かったらお兄さんが聖良と行ってきますか?俺としては聖良と一緒に行けるのが一番嬉しいけど、許可してもらえないなら、せめて聖良だけでも行かせてやりたいんですよね。」

俺の提案に暫し呆然とする兄さん。…さあ、どうする?

聖良が隣りで『ええ?お兄ちゃんと?』と叫んでいるのが聞こえる。
そんなに騒ぐなよ聖良。俺だって本当はおまえと行きたいさ。だけど、今はこの兄さんの気持ちを考えたら自分のことだけを押し通せないと思ったんだ。

それにこれはある意味賭けだった。


聖良の前では良い兄でいたいだろうこの兄さんが自分のエゴを通すか、それとも諦めて俺に譲ってくれるか…。少し策を含んでいる所もある。


譲ってくれよな。頼むよ。俺だって本当は聖良とデートしたいもんな。