薔薇姫-バラヒメ-


これも、きっと運命だ。


これを逃したら、こんな経験は二度とないと思う。



覚悟を決めたあたしは、ゆっくりと王子様の手をとる。



「―――はい!」



王子様はそのままあたしの手を引っ張った。


その反動で、あたしは王子様の胸の中に収まる。


「…ひ、ぇ…!?」


「移動するのに、離れていると危ないので」


でもこれは、くっつきすぎでは!!


…なんて抗議する暇もなく、王子様は何かを小声で唱え始めた。


魔法、かなぁ。



なんだか、夢みたいだけど…この胸のドキドキは、嘘なんかじゃない。


あたし、ついに…


運命のひとに出逢っちゃいました。



眩い光と共に、視界が真っ暗になった。





…この選択に、間違いだと気づくのは、もう少し後のこと…。