結城家の豪邸は雪月達が通う「聖ナザレ学院」と隣接していて、それはそれは学園共々立派なものだった。
ローマの街からそのまま切り抜いて来た様な外観に、離れがあった庭には季節の花々が咲き乱れ、この学園の中庭にも、同じ種類の花が咲くのだと聞いていた。
だから雪月はいつも中庭で一人の時間を過ごしていた。
友達が居ないわけでは無いのだが、放課後に一人、一日の疲れを癒しに訪れるのが、いつしか習慣になっていたのだ。
無理に笑うのは疲れる。
いい子で居る事はもっと疲れる。
何故こんなにも世の中は、偽らなければ住みにくいものなのだろうか。
もしかしたら自分自身が、そうしてしまっているのかもしれないけれど。
