けれども海斗は振り返る事無く、背中を向けてヒラヒラと片手を振り去って行く。
「ったく…。」
何てマイペースな人。
そもそも雪月の部屋が本宅に移った事を、伯父様は知っているのだろうか。
幼い頃こそ本宅で兄や海斗と同じ様に生活をしていたものの、中学に上がると同時、雪月の部屋だけが庭に建てられた離れへと移された。
雪月と歳の近い年頃の息子を持っているのだから、それなりの配慮なのだろうとは思っていたものの、実際少し心細いものがある。
夜、一人きりで眠りにつく瞬間とか。
特に雨が降る夜は不思議と部屋の中で一人、静けさに体を丸めた。
ため息交じり、雪月が視聴覚室の扉をきちんと閉めた途端、下校の時間を告げる、チャイムの音が鳴り響いた。
