豪華な棘の装飾が施された両開きの門を抜けて、雪月は結城家の敷地へと足を進める。
豪邸の中に入ると、深いワインレッドの絨毯が雪月の足を優しく包み込んだ。
壁の両側に飾られたたくさんの絵画は、雪月の父親が描き残したものらしい。
今ではどこに何の絵があるのか、全て把握してしまっている。
とりあえず今日からしばらくの間は、食事や入浴以外もこの本宅で過ごす事になるのだ。
そういえば自分の部屋は何処なのだろうか。
雪月は辺りを見渡したものの、今日に限って暇そうにしている使用人が見当たらない。
一階の一番突き当たりにある螺旋状の階段に、一歩足を踏み出した時だった。
「何をしてる。」
階段の中段、踊り場で足を止めた陸が、険しい表情を浮かべて雪月を見下ろしていた。
