「……」

「おーい。今日のお前の球、いい感じだから、焦んなよ?」

シュンの肩を軽く叩きながら、俺は言った。

「焦ってねーし」

「はいはぃ、そーだね。ま、気楽に行こーや」


相手は今まで一度も負けたことがない"県立筑那波高校"、通称"ちくわ"。

シュンがノーヒットノーランを成し遂げた相手も、ここ、ちくわだ。


ちくわは弱小チームという訳ではないが、いろいろ不運なチームで、俺たちが入部してから行われた公式戦では、滅多に勝利を掴めていない。
(なんでも、エースピッチャーが大会前に怪我したり、高校全体で流行った風邪やインフルエンザに、部員の過半数が苦しめられたりと、散々だったらしい)