イッテハイケナイ
ヒキカエセ
自分の中で警告が鳴っている。それでも、陽菜はビクビクしながらも扉の向こう側へと足を踏み出した。
「階段…?地下、かな?」
目の前には、冷たいコンクリートに挟まれた暗い階段。
チリーン…
音がより大きく聞こえ、この下だと確信する。
コツンとローファーの音でさえも響き渡り、陽菜は地下に向かって降り始めた。
陽菜は気づいていなかった。
誰もいない屋敷から、鈴の音がした事に。
灯り一つない屋敷内を歩き回れた事に。
そして…、行方不明になった人間の亡骸さえ無かった事に。
周りにある不自然さに全然気づいていなかった。
地下には、特に変わっている所は無かった。物置きに使っていたのだろうか、物が散乱していた。
鈴らしき物は見当たらなかったが、
……チリリーン………
音が、一際大きく陽菜の耳に響いた。
とっさにキョロキョロと周りを見渡して、…ふと気づく。
地下室のさらに奥に一つだけある扉。
扉を見ると、何故か胸騒ぎがする。
陽菜は、恐る恐る扉に近づくと、ゆっくりと手を伸ばした。


