心菜が顔を向けた方につられて見ると、『プリンス』こと大神拓斗がいた。
『プリンス』と呼ばれるだけあって、その顔にはいかにも爽やかな笑顔が張り付けてある。
『クイーン』ことクールな優等生、柏木美憂に
『プリンセス』こと可憐な美少女、早乙女心菜に
『プリンス』こと爽やかスポーツ青年、大神拓斗。
よくわからないが、あたしたちはそう呼ばれているらしい。
あたしは故意にそのキャラを作っているわけではないが、
2人は違う。
先程心菜が言った通り、あたしたちはみんな『同じような性格』なのだ。
「おはよう拓斗君」
拓斗があたしたちの元に来るなり、心菜は最上級の偽りの笑顔を作って挨拶をする。
「心菜ちゃんに美憂ちゃん。
2人ともおはよう」
それに応えるように拓斗も最上級の偽りの笑顔で返した。
そんなふたりを見て、登校中の生徒が様々な声をあげる。
なんという茶番劇。
「おはよ」
そして、いつものあたし。
あたしのいつもの日常が始まる。
…こいつさえいなければ。

