「私、少し出かけてきます。」


下にいたお手伝いさんにそう告げて、羽朶は城を飛び出した。




「わぁ。」


門をくぐれば辺り一面は桜色で。


風を全身に感じた。




「鈴ー!」


羽朶は空に向かって鈴を呼んでみる。


しばらくすると、鈴はぱたぱた飛んできて羽朶の差し出した人差し指に留まった。




羽朶は、一つの桜の木の陰に腰を下ろした。


そのときに浮かんだのが昨日の窓越しにみた彼の笑顔で、羽朶は何かいつもとは違う気持ちになった。


お母様たちとは違う「気になる」という気持ち。