「で、でも私…、姫様ではないですよ…。お姉様は多分下の階にいるのではないかと…。」


羽朶が控えめにそう話すと、外の影は同じように控えめに、くすっと笑った。




「いえ、僕がお会いしたかったのは、正真正銘あなた様でございます。」


どうしてこの方は、こんなに丁寧な言葉を使うのでしょう。




羽朶はベッドから降りて、窓に近寄った。


そっと窓の外を覗くと、そこには声に似て優しそうな笑顔の人。




「あなたはどうして、私に会いに来たのですか?」


羽朶は窓越しに、花壇先の柵に立つ黒いスーツの男に聞いた。




「あなたの唄はいつも悲しそうだ…。」