空の上の、もっともっと上の方に一つの国があった。


地上からは見えないくらい上の方。




遥か昔には、この国は地上にあった。


今も空にあるという事以外は何も地上と変わらない。




地上にはその場所にぽっかりと穴が空いてしまっている。




昼は青空に同化し、夜は闇に溶け込むこの国を、地上の人はどうしても見つけることは出来なかった。




空に近いこの国は、昼は太陽の光を散々に浴び、夜は輝く星の光が降り注ぐ。




「ぴ、ぴっ。」


ある日の昼、一羽の鳥がとある城の高い位置にある部屋の窓を突いている。





「鈴(リン)!」


鳥の名前を呼んで、一人の女の子が窓に飛び付くようにして駆け寄り、窓を開けた。




彼女の名前は羽朶(ウタ)。


この国の第二王女。




彼女には、一人の姉がいた。





.