貧乏姫と金持ち王子




携帯を"パタン"と閉じて立ち上がり、駅の方に向かって歩き出した時─。



「雪!」



と、後ろから声を掛けられた。


振り向くと、そこにはスーツ姿の悠翔さんが立っていた。


悠翔さんの姿を見たとたん、私の目に涙が溜まった。


悠翔さんが私の前まで来る。



「雪、ゴメンな……」



そう言うと、優しく抱きしめてくれた。


悠翔さんの胸の中で、首を左右に振る。



「社員がヘマしちゃって。先方に謝りに行ってたんだ。メールも電話も出来なくてゴメン。運転中に雪からのメールが届いて……。間に合って良かったぁ」



私は顔を上げて、悠翔さんの顔を見る。



「お疲れ様」



そう言った時、涙が頬を伝った。



「泣かないでよ」



悠翔さんが笑顔でそう言うと、指で涙を拭ってくれた。