貧乏姫と金持ち王子


その時──。



「雪!」



悠翔さんの声が聞こえた。


バタバタと足音が聞こえる。


部屋に入って来た悠翔さんの荒い息遣いが聞こえる。



「テメェ!ふざけんなよ!」



悠翔さんはそう叫ぶと、彼の体を突き飛ばして、私の体を起こしてギュッと抱きしめる。



「雪…ゴメンな…」



悠翔さんの胸の中で声を上げて泣いた。



「彩香…」



彼の声で顔を上げると、部屋のドアの前で立つ中井さんの姿が見えた。



「颯斗…。藤原くんから全て聞いたわ。もうこんなことやめて!」



中井さんはそう言うと、手で顔を覆って泣き出した。