車が公園の前に止まる。
「ありがとうございました」
「いいえ」
彼が笑顔で言った。
「これ洗って返しますね」
私はタオルを少し持ち上げて言った。
「いいよ」
彼はそう言うと、私の手からタオルを取って後部座席の上に軽く投げた。
「でも……」
「いいからいいから」
「すいません……」
「じゃー気を付けて帰れよ」
「はい」
私は助手席から降りた。
彼が手を上げて、車をゆっくり出した。
私は彼が角を曲がるまで見送った。
もし着いて来られて家を見られたら……。
だって……。
私が住んでる家は築30年のボロアパートだから。