彼が近付いて来る。 怖い…イヤだ…来ないで…。 その時、家の中にいた海が外に出て来た。 「お姉ちゃん!お母さんから電話だよ~」 「う、うん…すぐ行く」 彼の「チッ」という舌打ちが聞こえる。 そして海に聞こえないように、 「諦めないから」 と、低い声で囁くと、いつもの笑顔に戻って 「さようなら」 と、言って車に乗り込んだ。 助かった…。 足の力が抜けて、その場に崩れ落ちた。 「お姉ちゃん?どうしたの?」 「ん?何でもない」 私は、涙を必死で堪えて、笑って海を見た。