貧乏姫と金持ち王子


その時、私の脳裏には恐怖の二文字が浮かんだ。


怖い…。


彼の顔は笑顔だけど、いつもの笑顔と違う。


金縛りにあったかのように体が硬直して動かない。


声を出すことも出来ない。



「佐藤さんは…好きな人いるの?」



私は首を左右に振った。



「じゃーさぁ…俺と付き合わない?俺、佐藤さんのことが好きになっちゃった」



笑顔の彼。


私はまた首を左右に振る。



「どうして?好きな人いないんでしょ?俺、優しくするよ?」



私は首を左右に振りながら、石のように重たい足を動かして後退りした。