「待って!」 歩き出そうとした時、彼に腕を掴まれた。 私は彼の顔を見る。 見開いた目から、あふれ出した涙がポロポロとこぼれ落ちた。 「送って行くから……」 彼が笑顔で言う。 「い、いいです!バスに乗って帰りますから」 私は頭をブンブン振った。 「いいから。濡れたままバスに乗るの?それに風邪ひいたら困るだろ?」 彼は手を伸し、私の頬に触れると指で優しく涙を拭った。 "ビクッ"と反応する体。 と、同時に胸が"ドキドキ"と鳴りだした。 彼はニッコリ微笑むと、私の手を握り歩き始めた。