「ゴメンな……」
申し訳なさそうに謝る彼。
「いえ……」
彼のせいじゃないとわかってる。
1番悪いのは私。
彼は私を助けてくれた。
彼のせいじゃない。
けど、素直になれない私は、彼からパンプスを奪い取ると、もう片方のパンプスと一緒に袋に突っ込んだ。
そして、袋の中に入ってるスニーカーを取り出し、それを履いて立ち上がる。
「ありがとうございました」
私は頭を下げてお礼を言うと、彼に背を向けた。
目からあふれ出した涙を見られるのがイヤだった。
素直になれない自分が嫌だった。
空はいつの間にか晴れててセミの鳴き声が聞こえてきた。
でも私の心の中は土砂降りの雨が続いていた。



