「もういいです!後は自分で何とかします!ありがとうございました」
私が彼の手を止めようとした時──。
「取れた」
彼の手にはパンプスが握られていた。
良かったぁ……取れて。
取れた嬉しさから、さっきまで子供扱いされた悔しさなんか吹き飛んでいた。
スーツを濡らしてまで取ってくれた彼に感謝の気持ちが出て、私の顔が自然と笑顔になる。
…………が。
ヒール部分が折れていた。
「あぁぁぁ!!!ヒールがぁぁぁ!!さっき買ったばかりなのに……」
プランプラン状態のヒール。
せっかく初給料で買ったのに……。
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