貧乏姫と金持ち王子


洗い物をしてる手が再び止まる。


目に涙が溢れて、それが次から次へとこぼれ落ちていく。


その涙が、シンクに落ちていく水と混ざり合い流れていく。



「雪?今日、お母さんは仕事?」



私は首を左右に振った。


日曜日は私もお母さんも仕事は休み。



「じゃー、お母さんに電話しときな」


「えっ?」


「だって…帰りたくないんだろ?」


「…ん」



私は小さく頷いた。



「お母さんに電話して夜に帰るって、ちゃんと伝えとくこと。いいね」


「…うん」



悠翔さんが手を伸して、水を止める。



「雪…こっち向いて?」



私は、体ごと悠翔さんの方を向く。



「だからもう泣かない」



悠翔さんは小さい子供に言うように優しく言うと、
ニコッと笑って、指で涙を拭ってくれた。