貧乏姫と金持ち王子


朝ご飯を食べ終わり、私はキッチンで洗い物をしていた。


リビングに悠翔さんが入ってくる。


いつも見る悠翔さんのスーツ姿。



「雪?送って行こうか?」



腕時計をしながら悠翔さんが言った。


もう…バイバイしなきゃいけないんだね…。


帰りたくない…。


離れたくないよ…。


でもワガママ言って、悠翔さんを困らせるのもイヤ。



「雪?」



悠翔さんが、後ろから抱きしめてくる。


洗い物してる手が止まる。



「どした?」


「…ん?ううん…何でもないよ…。もうすぐ終わるからね。あっ!ジャージ着て帰ってもいい?浴衣で帰るのは恥ずかしいから…」



私は、寂しさを紛らわすためにワザと明るく言った。



「雪?ホントは帰りたくないとか思ってる?」


「えっ?」


「雪の顔に書いてあるよ。"帰りたくない"って…」



悠翔さんが私の顔を覗き込んで、クスッと笑った。