電話が切れた。
ほんま笹倉さん、優しい。
あの声が好きやわ。
「あ!ゆかりちゃん!」
私を呼ぶ声が聞こえて、その声の方向に振り向く。
それは、石田さん。
遠くから走ってきて、石田さんは変装しとるから周りの人はそんな石田さんを避けとる。
私は、ただバス停から見てた。
「ゆかりちゃん、恵美ちゃんは?」
「急用で先帰りました」
「そなんや。俺はこれからまた仕事やねん…」
疲れとるなぁ石田さんも。
「笹倉さんは?」
「笹倉はない。俺だけ」
「頑張ってくださいね」
それだけ言った。
「…………それでさぁ、最近大丈夫?」
「何がですか?」
私はボーッとする。
「この手とか……」
あまり触れてほしくない話題や。
私はただ俯いて黙る。
汚れた地面を見つめとる。
「今度家行ってもええ?」
私は驚いた。
なんでここまで発展するん?
「なんかニュースとかで流れそうやけど……」
…確かにそこ心配や。
「ゆかりちゃん笑わしたいんや……」
切ない声が耳に入る。
「元気なさそうやし…」
まさにそうです…。
「笹倉と行ってええ?」
「…………………………はい」
口からは素直な言葉が出た。
こんな自分が……ほんま珍しいな。


