苦しいながらも、懸命に生きたあの頃。

流一、鏡子に励まされながら生き抜いた日々。

どうして、一体どうして?

記憶の壷をひっくり返したかのように一気に思い出す。

どうして、今の今まで忘れていたんだろう?

翔吾は鏡子の手紙を開いた。

そして、雨宮鏡子が唯一残した痕跡を、何度も読み返していた。

『こんにちは。

翔吾君、元気ですか。

鏡子がいなくなった事で落ち込みすぎてませんか?



雨宮鏡子は誠に勝手ながら失踪します。

正直私も残念です。

理由については、この手紙が誰に見られるのか判らないので書きません。



もしも、私に会いたくなったたら…

全力で忘れてください。

雨宮鏡子を翔吾君の記憶から消し去ってください。

それが駄目なら、昔書いた交換日記でも読んで気を紛らわせてください。

何をしても、もう鏡子とは会うことができません。

だって、この地球上のどこをみても雨宮鏡子はいないのですから。


それでは、お元気で。

雨宮鏡子