姫守の城 (仮)

「まーくんは食べないの?」

 モゴモゴと口いっぱいにしたまま喋りだした。行儀の悪い。

「後で智と食べますよ」

「そうだとは思ったけど、一応の確認ね。あたしだけ食べてるのも悪い気がしてね」

 ……。

「詩歌(しいか)さんでも気遣いできるんですね」

「ぶはっ!あたしの評価どんだけ低いんだよ、カレー噴いちゃったよ、お姉さんはショックだよ!」

 失言だったようだ。それにしてもショックとはカレーを噴いた事なのか過小評価の事なのか、…テーブルを拭く気配が無い事からして、多分後者だろう。
 テーブルを拭き台拭きを厨房で洗い戻って来た僕に敷島さんは言った。「あたしは不満です」と。カレーはもう食べ終えていた。