姫守の城 (仮)

 盛りに盛ったカレーをこぼさない様、慎重に慎重によたよたと歩いてきた敷島さんは滑稽で、本当に少女に見えた。
 たどり着いた敷島さんに隣の椅子を引いてあげ座らせた「ありがとぉー」と腰掛けた彼女の額には汗が浮いていた。

「詩歌さん《おかわり》って知ってます?」

「何?それ」

 うん。まあ、だと思った。そんなもんだろう。

「いえ、なんでもありません。気にしないで下さい」

「含みの在る物言いだね」

「詩歌さん可愛い」

「知ってるぅ!」

「冷めますよ、カレー」

「ひゃう」

 敷島さんは美味しそうに頬張っていく。素直な人って素敵だな。僕が《おかわり》を知ったのは極最近、仕事の合間に寄った喫茶店で耳にした。辞書を引いたがよく解らず、後日早織さんに問い掛けた。使用用途は理解出来た。そういうものも在るんだ、と。