姫守の城 (仮)

 僕はいままで紅茶を美味しいと思ったことがない。
 人の好みは千差万別だろうし、愚見する気もない。普段ジャンクフードばかり食べてる僕に、ブルジョワジー的飲料がわかるはずもないのだが、彼女にしてみれば天地がひっくりがえるほどの衝撃だったらしい。
 そのファーストインパクトから度々、紅茶を持ってきてくれるようになったのだけど、僕としてはいい迷惑だった。

 という訳で、戦績十三勝零敗。十四戦目。

「………」

 味がない。

「苦くはないですね」

「ふむ。これで漸く渋みを克服出来たのね」

 それで?と続きを促されたが僕は応える言葉が解らない。味に対してのコメントなんて美味いか不味いか二者択一だ。料理番組でも観ておけばよかった。後悔先にたたず、か。