「早奈英さん!」

シルバーの気を感じない。

しかし、九鬼は南大門をこえたところで、魔神鹿女の死体を発見していた。

東大寺から離れ、国道に向かって走る九鬼の横合いから、黒い物体が飛び出し、道を塞いだ。

「我が名は、魔神鹿のフン!1号!」

さらに後ろにも、同じ魔神が現れた。

「我が名は、魔神鹿のフン千二十号!」

その番号が表すように、魔神鹿のフンの数は、信じられない程いた。

まるで奈良公園には、魔神鹿のフンしかいないように思えた。

「どけ!」

九鬼は、回し蹴りを魔神鹿のフン1号に食らわした。





「何なの!これ!」

下っぱ達を追いかけ回し、南大門まで戻ってきた乙女ピンクは、絶句した。

巨大な鹿のフンが、辺りを埋め尽くしているのだ。

「しゃらくさいわ!」

ピンクは乙女ケースを突きだし、

「兵装!」

武器に変えた。

「乙女ミサイル!」

それは、ミサイルランチャーだった。

「くらえ!」

ミサイルが発射され、爆発した。

お土産屋やうどん屋に、飛び散った大量の鹿のフンが、降り注いだ。


「死ねえ!」

ピンクは、ミサイルをまた発射した。

その攻撃はのちに、嵐山乱射事件に続く…鹿のフンミサイル事件と呼ばれた。