――昨日の会話を思い出してみる。

『あっちゃん、外に出たいなんて言っちゃいけないよ。雪だるまをつくろうなんて考えちゃいけない。あっちゃんの小さな手じゃ、雪玉なんてつくれないよ。それに、あれは雪だるまを作るのに向いてな……』

『小さい手でも、転がせることはできるもん。ねえ、外に出して。病気が悪くなってもいいの』

『そんなこと言っちゃいけません。あっちゃんの病気が悪くなったら、みんなが悲しむでしょ?』

 いつも、看護婦さんは、『みんなが悲しむからだめ』って言う。

 病気が悪くなったって、死ぬのが早くなるだけなのに。

 みんなは退院したら何がしたい?って、聞くけど、それが嘘だって事は直感的に知ってる。

 みんなその話題をするとき一瞬悲しそうな顔をするから。

 死にたくない。

 私、まだなんにも楽しいことしてない。

 ずっと病院の中しか知らないのは、嫌。

 どうせもうすぐ死ぬんだから、楽しいことしたっていいじゃない。