館中にひろがる、カレーの香り
小皿に、味見用のそれを入れて
梅川さんはいそいそと
俺の口元に持って来た
「 旨いです 」
でしょう?と言う顔で、
また台所に戻って行く
「 …もう学生さんは夏休みだっけ 」
「 はい 一昨日入りました 」
「 夏休み中は良いけど
その後どうしようねえ… 」
「 やめますよ 大学 」
「 ひ?!ちょ… 」
「 働いて、こいつの面倒見ます 」
「 ま、まあまあ、焦らないで 」
焦ってないよと思う
「 書類上では、まだこの子は
母親と暮らしてる事になってる
市の民生委員に
相談してみるつもりではいるけど
生活保護金位しか出ないだろうし
施設に入るなんて事になったら
この子は飛び出して
また何処かヘ、居なくなるかもしれない」
梅川さんはサラダに
マヨネーズを、一度かけようとしたが
あ と言う表情をして、
酢と塩胡椒と油をあわせ
『フレンチドレッシング』と
サラダにかけた
「 ……元々、私は新宿にいたから
見つかるかは解らないけど
一緒に暮らしてた子をね
捜してみようかと思う 」


