カッパはその後
胸を押さえて、少しだけ息を荒くした
「 青山君
少し、抱きしめてあげて 」
それに従いベットに座り
カッパを膝に乗せて、強く抱きしめる
梅川さんは聴診器で診察し
その後眠る薬を、腕から入れた
カッパは腕の中で、意識を落として行く
「 ……誰にも
吐露出来なかった事を話してしまって
少し不安定になったんだね
目が覚めるまで、
こうしていてあげてくれるかな 」
俺はカッパを、思いきり抱きしめながら
「 …――何でこいつ泣かないんだよ! 」
そう 叫んでいた
「 ……泣いても
誰も助けてくれなかったからだろう 」と
梅川さんは呟く
「 …少し、身内の者が調べたらね
この子は、横濱の外れの高校に
奨学金を受けて通ってて
入学当初は、髪も長くて
ただ、先輩か誰かの恨みを買ってね
男絡みなんだそうだけれど
その学生にだいぶ執心されたそうで
その彼女に呼び出されて
ハサミで、切られたみたいなんだよ 」
「 ……… 」
「 頭の一番古い、深い傷は
言わずもがな、かな
…青山君
通帳は君に預けるよ
この子の事で生じるお金は
全て竹田さんから出ているし
『孫二人育てているかと思うと
楽しくて仕方ない』って
体調もかなり良いんだ
私も新しい友達が出来て
実は少し、大人げ無く楽しい 」
そう笑ったメガネの奥は
少年の様だった
―― 眠るカッパを抱いていると
梅川さんが
「 少し、台所借りていいかな 」
俺が頷くと
白いストラップのYシャツを捲くって
冷蔵庫から色々取り出し
調子外れの鼻唄を唄いながら
食事の用意をし始めた


