九時の柱時計が鳴る
それを聞いてから、
梅川さんは言葉を続けた
「 家出、してたのかな? 」
「 …… 」
「 すぐ連絡しようとはしていないよ
―― 私は、
君の身体の状態を見ているからね 」
「 ………新宿で
知り合いの所に、いました 」
「 誰かと、暮らしていたの? 」
カッパは無表情になり
それに頷く
「 ……最初は
たまり場になってる場所に居て
そこに、彼が居ました
風邪、引いたらしくて、皆で行って
そのまま、おれは、残りました 」
「 好きな人だったの? 」
「 最初は大嫌いで……でも 」
「 うん 」
「 ……熱、出てた時
お母さん…って 手 を 」
「 ……うん 」
梅川さんが
カッパの皿の辺りを撫でると
奴は不思議そうな顔で
ただ黙って前を見ている
「 …でも今は、
出てきちゃったんだよね
何か、あったのかな? 」
少し間があって
カッパは、口を開く
「 ……おれ
そいつがギター弾くの、みてるの
すごい好きで
最初はおれもバンドに参加したりして
楽しくやってたんです
でも途中から、
そいつは別のバンド始めて
ライヴは、お金かかるから
おれ、バイト始めたんです 」
「 うん 」
「 …久しぶりに、日曜の昼
あいつが帰って来て、嬉しくて
おれ、洗濯してて
夜からまたバイトあるから
ご飯も久しぶりに
一緒に食べたかったから
慌てちゃって
庭で、転んだんです 」
「 うん 」
「 ……そ、したら 」
「 うん 」
「 ………何やってんの?って 」


