群青の月 〜『Azurite』take00〜






出て来たのは、501のジーンズ

フォークを取るとジーンズの腰の内側を
少しづつガスガス、突つき始めた



一瞬驚いたが
何か厚い布がペラっと一枚めくれて
出て来たのは、幾重にもビニールで巻いた
薄い固まりがひとつ



それをそのままベットの上に置き
そして正座をして
手を着き お辞儀をした





「 …な、どうした? 」





梅川さんは黙って、
そのビニールを開ける



―― 出て来たのは、貯金通帳と印鑑



梅川さんに渡され片手で開くと

残金、1203520





「 …どうしたんだこれ 」



カッパは真っすぐに、顔をあげた



「 きちんとバイトして貯めたお金だ
お世話になったから 」



それを俺は、カッパに投げた




「 ――― 要らない 」



「 で、でも!! 」




梅川さんが拾って、カッパの前に置く



「 二人だけだと受け取らないと思って
私が居る時に、渡したのかな? 」



カッパは頷く




「 でも、これね

例え私が青山君の立場でも
決して、受け取らないと思うよ?
竹田さんもね 」




「 ……いっぱい、
ご飯食べさせて貰ったし

怪我も……

時間使わせてしまったのは
どうしようもないけど… 」



「 この額は、
君の年からしたら大金でしょ?
バイトと言ってたけど 」




「 ……昼間は
学校、出席日数計算して
休める時はバイトして、夜は、毎日 」



「 毎日って ―――
お家の人は、何も言わないの? 」



「 ……だれも居ないから、平気です 」



「 居ないって… 」



「 …父は、小さい頃居たみたいで
母は……居なくなりました 」



「 いつ? 」




「 …多分、六歳くらい…の時 」