群青の月 〜『Azurite』take00〜





「 この前、追い掛けて来た奴か? 」




「ううん…
あいつは俺の友達で…


髪切られた後
バリカンで丸刈りにしたんだけど
それ見て、なんでかピアスするって


…おれ、痛いの嫌いだし
それで、逃げてた… 」




「 確かに、似合いそうだけどね 」


耳を引っ張る



「 …なんかクラスの子が
赤く被れてて、痛いって呻いてたから 」



「 夏場は、あんまりやらない方がいい
化膿しやすいから 」



「カカシはしないの?」



「 似合わないだろう いい男でもないし 」




「 …年を増すごとに
いい味が出てくる顔だって
似た顔の人が、テレビで言われてたよ

竹田さんも
"あいつはいい面構えしてるから"って言ってた 」




「 竹田さんに言われるのは嬉しいね 」



「 …渋くて、カッコイイと思うよ 」



「 …この一番、深い傷は? 」



「 包丁で刺された 」






それ迄と変わらないトーンで
カッパは言った




しゃがんだまま、右手にパンを持って
足の指を左手で弄っている



誰に、とは 聞かない




カッパはパンに噛り付き

それを俺はちぎって、半分食った




「 あ。 」



「 まだあるだろ

―― 明日の朝は目玉焼き焼こうか 」



「 うん 」




カッパはそのまま
俺が弾いているのを

碧い瞳で、ずっと見詰めていた