群青の月 〜『Azurite』take00〜





「 パン焼くぞ カッパ 」


俺はグリーンのエプロンをつけて
ベットの上から
『魔女達の宅急便』を見ている奴に
声をかける

ちょうど今、長いCMの途中だ


―― 歌を唄っていた様だが
やめてしまった



「 窯あるの?! 」


「 電気だけどな 」



説明書を見つつ
昼に仕込んでおいたパン種を
ボールで運んで来る


四角い焼き容器を横に置いて


「 ここに入れて 」


やっと包帯の取れた腕で
カッパがよろよろと持つボールに
三つに分けた種
俺がそれを、ひとつづつ並べて行く




長方形の電気窯みたいな形のそれに
容器を入れて、蓋




「 右のスイッチ入れて 」

カッパがピッと人差し指で押すと
『焼き上がりは40分後です』と声



「 ちょうど映画終わった頃か 」


「 パン焼くの初めてだ! 」


「 実は俺も初めてなんだ 」



「 ええええ!!! 」


「 計量カップでキチンと量ったし、
平気だと思うよ 」


「 どんどん膨らんだらどうしよう… 」


「 潜って食べようか 」


「 食べ切れ無かったら?!」


「 竹田さん達も呼ぶ 」



二人でゲラゲラ笑い
ホットプレートを出し


俺は料理があまり出来ないので
医者、
梅川さんが持って来てくれる
野菜や肉を切って
これで焼いてひたすら食う


カッパは偏食と言うか
野菜ばかりを食うので
焼けた肉を奴の前に移動すると
すかさずまた、俺の前に戻した



「 食えよ 」

「 くえよ 」


今日は芋の日らしく
スライスしたイモばかりを食っている


「 カッパ
焼肉のタレもあるぞ 」


「 塩がいい 」


ソファーに座って、前屈みになりながら
スープの元を開けて、お湯をいれた


テレビでは、消えた魔力を取り戻そうと
頑張っている所だ




「 …おなら出そう 」
「 おなら出そうだよな 」



同じ事をいいながら
二人共食い入る様に、画面に見入った