「 こら、じっとしてろって 」
俺も笑い
奴も笑い声を上げながら
さっきより体の力を抜いた
膝上まで拭いて、タオルを畳んで床に置く
「 この上で足、1、2 」
カッパはその通り、踏み鳴らす
「 ベットに座って 」
そのタオルで
床に飛び散った水を拭いた
石張りの床だから
トイレに行く時転んだら可哀相だ
「 …カカシ 」
「 ん? トイレか? 」
煙草に火を着けて
立て膝で床を拭いたまま
顔をあげた俺の頬に
カッパは、
静かに顔を寄せて、キスをして来た
――― それは、小さな子供みたいな
少し、困った様な笑顔で
この時、若干二十歳前の俺の心に
激しい、
多分『父性』と呼べるべき物が
思い切り目覚めてしまったのだった


