柱時計が、八時を指す
奴を一度ソファーに置き
カーテンを閉め、
冷蔵庫から保冷枕を出した
カッパの顔は半分、真っ青に腫れ上がって
拡げたままの手の平は
石を、力いっぱい扱ったのか
ぐちゃぐちゃになって切れていて
シャツは真ん中のボタンまでちぎれ
コイツの血なのか、誰の血なのか
至る所、赤黒く染まっている
その時、玄関のベル
…―こんな時間に
俺はそれが誰だとしても
中に入れるつもりは無かった
しかし声
「 俺だよ青ちゃん!!
『犬』の様子見に来たぜー! 」
「 …竹田さん… 」
後ろを見ると、
もう一人、メガネをかけた男がいる
「 …こういう時の医者だ
心配しなくていい
あんまり酷けりゃ、病院に連れて行くが 」
メガネの中年男性は
俺に一礼すると、部屋の奥に向かった
どうもこの部屋に
来た事がある様な足取り
ソファー、テーブル、テレビ
その向こうに、床から天井迄の窓があり
芝生の生えた、庭に出られる
今は、カーテンを閉めていた
医者は鞄から聴診器を出し
奴の血だらけのシャツを脱がせる
…事務所で添い寝した時
やけに肩が細かったし、
そうだろうとは思っていたけど
やっぱりこいつは
『 女の子 』だった


