運転席の窓を開け、声をかける




「 ユカちゃん 」



「 はい!!ししょー! 」



「 奴の連絡先、
教えなくていいの? 」



「  え…… 」




「 あいつちゃんと、携帯あるよ

と言うか、連絡困って
赤池さんが持たせたんだけど 」



「 アハハハ 」




「 俺のは、さっき電話かけたから 」




ベースを担いだまま
スポーツバックを下ろして
スカートのポケットから
携帯を出している



用心深くなっていて、少し面白かった





「 はい 着歴残ってます! 」



「 貸してもらっていいかな?
登録する

俺が事務所変わりになってるから

ライヴ
見に来たくなったりしたら連絡して 」



「 はい! 」





もし灰谷が
この子に連絡先を教えて居なくても
俺を口実に使えると

嫌な大人の気回しで、
まんまと登録し、返す





「『師匠』って入れといたから 」



「 えーー!! 」



笑いながら
運転席に戻った




「 では、おやすみ 」




「 おやすみなさい!!
ありがとう&お疲れ様っした!!
ししょー!! 」







窓を全開にして

そして 前を見て 走った