夕方になり
灰谷と女の子が戻って来た
二人共全速力で、走って来て
汗みずくになっている
ベースは無事に
電車の中で、灰谷が発見したらしい
灰谷は『 顔洗って来る 』と
楽屋を後に
女の子は椅子に座って
蘭さんに氷を貰いながら
友達皆に、本やノートで扇がれていた
―― それからはもう
その女の子の目は
灰谷に釘づけになっていて
誰の目にも判る位、
恋する女の子に変身した
蘭さんも
『 むっちゃドキドキするわ〜! 』と喜び
緑くんは
『 …相手が灰谷とは…
こりゃまた難敵を好きになったねえ 』と
まるで学校の中みたいな
賑わい方をしていたのを
当人達だけは、知らない
そして日が暮れて来ると
ライヴハウスの看板と
入口のスポットが
頭上と足元を、照らし始める
地下階段へ続くマットの上には
招待客だけでは無く
一般客の人達が増えて行き
―― 俺は
コンビニとライヴハウスを隔てる道の
ガードレールに座りながら
ジッと、その一群を見つめていた
一人、思い出したからだ
もしかしたら
あんな風にネットに書き込む位
執着しそうなあの男を
―― 改造くん


