群青の月 〜『Azurite』take00〜






―― なんだか無性に腹がたった

自分でも、わけがわからない

珍しく苛々して、煙草を消すと
緑くんが声をかけて来た





「 どうした?
…変な奴でもみつけたのか? 」


「 …いや 何でも無い 」




そんな話をしていると
後ろから、トトトンと
肩を叩かれた

赤池さんだった



「 どうしたの? 」



「 うん あのね…
朝の女子高生さん達いたでしょ


そのベースの子が
電車に、
…ベース忘れて来ちゃったみたいでね 」



「 あひゃー 」と緑くんがいい

灰谷が反応した



「 …今朝、電車の中にいた奴だ 」



「 そうなのか 」


「 …揉みくちゃにされてたから
ベース、扉際に移動した 」




「 それでね
ベース貸して欲しいみたいなんだけど…」




髪の長い、しっかりしていそうな
女の子が
泣きそうなちびの、横にいる


俺はベースを持って
その子の前に、歩いて行った




「 はい どうぞ

多少チューニング狂っても
気にしないで
俺ら、1番最後だから 」



差し出すと

「 ありがとうございます! 」と
挨拶したのは、髪の長い子の方で
おかっぱの子の方は
受け取ったまま、茫然自失になっている



…… 平気なのかこの子は



よかったね!と声をかけられ
俺も、元居た場所に戻る



緑くんが立ち上がって

「 うーむむ
フルスケールのベース弾けるのか?
随分ちっこいぞー、あの子 」



赤池さんも

「 そうなんだよね〜

でも他のバンドさん、五弦とか
ウッドベースとかだから
聞いておいてあれだけど
マジで、青山くんありがとうね 」



「 気にしなくていいよ 」




―― こんな場面でなんだけど


セーラーだろうが女子高生だろうが
やっぱりあずる以外は
何にも思わないな と、あらためて思った