…キャップに隠れて、顔は見えないが 腕を組み ジッとこちらを見ているのを感じる そしてその人は 人波を移動して来ると 『 いいベースですね 』と キャップの下の 形の良い、笑った口元を見せた 俺が 「 宝物ですよ 」 そう笑うと彼は、 一瞬、血の気の失せた様な 歯を見せない弱い微笑みを浮かべ その場を、去って行った ―― 妙に気になる 笑ってはいたが 一瞬、刃物の様な敵意があって だから俺も、同じ様に返した そして "宝物"の一言で すぐに消したのがわかった