練習が終わり
赤池さんが、自分の連絡先を
メモに書いて渡す
灰谷は『携帯無いです』と言い
緑くんに
『若者よ、それでいいのか』と
驚かれていた
スタジオ前で
皆、別れる
赤池さんと、緑君は電車
傘をさしながら、手を振って
駅に向かって歩いて行った
俺は車を
近場の駐車場に停めていて
そこまで走って行こうとしたが
途中で後ろを振り向き、立ちどまる
階段から上がったスタジオの
黒い雨樋の下で
灰谷は、ポケットに手を入れて
地面を見つめ、突っ立ったままだ
「 灰谷 」
雨音の中、そう呼ぶと
彼はゆっくり、顔をあげる
そのまま小走りしていると
奴のブーツの音が、横にあった


