―― 横濱の竹田さんの屋敷は
木造の立派な日本家屋で
『 篭ってると気の毒だぜ 』と
茶室に招かれた
「 …あずるの父親が引き取りに? 」
そう問う俺に
竹田さんは答える
「 …ああ
あずるちゃんが小せえ頃に、離婚して
国に帰っていたらしくてな
まあ、鉄の掟の親が出て来ちまったら
他人には手を出せねえよ
昔はただの小僧っ子だったが
今はしっかりして、
何でも有名な、音楽家らしいぜ 」
―― 音楽家
「 …実はよ
俺ぁ、あずるちゃんの母親の梓と
あの横濱の館でな
ほんの少しだけ
一緒に暮らしてた事があるんだ 」
「 ……本当ですか 」
「 ああ、いい女でよ
でもまあ、
あずるちゃんとは正反対な所があったな
すぐ、喧嘩別れしちまったが 」
「 …父親の名前、わかりますか
俺、会いに行きます… 」
「 まあ落ち着けや
あずるちゃんだって、落ち着けば
連絡してくるだろう
少し待てよ 」
「 ……俺のせいで刺されたから
きっとして来ません 」
「 本気で言ってんのか阿呆!! 」
―― そうだ
俺のせいで、刺されたんだ
あずるが望まない限り
会える権利は 無い
「 …あずるちゃんはな
"約束は守る"
そう言ってたぜ 」
「 会ったんですか?!いつ!! 」
「 茶室で暴れるのは反則だぞこの阿呆
茶室がこんなに狭いのはな
刀使って切り合え無い様になんだぜ
…そういやオメエどうするよ
館戻るのか
新宿のは引き取るか 」
「 ……… 」
「 闇雲に捜し回ってたらしいが
見つからないのはそういう訳でよ
…まあ、ゆっくりな
オメエもまず、梅川の言葉借りるなら
テメエのコンパス修正してよ
きっちり自分の
めかた量れる様になるまでさ 」